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歯を残す努力 - vol.65 -

当医院に初診で来院される患者さんの多くは、現在他歯科医院にて治療中の方です。

治療しているにも関わらず調子が思わしくなかったり、先生とじっくり話すことができない環境だったり、治療に疑問を感じたり・納得できなかったり、神経をすぐ取ったり、簡単に抜歯を勧められたり、インプラントを勧められたり、などなど来院される動機はさまざまですが、多くは患者さんの思いが満たされていないからです。

中でも一番多い相談は、「抜歯してインプラント治療を勧められましたが、他に方法はありませんか?」と来院される方が半数を占めます。

適切な判断でのインプラント治療であれば何ら問題はありませんが、しっかり治療すれば残せそうな歯でも、いとも簡単に抜歯してインプラントを勧める治療計画が目立ちます。


歯科界では以前から「8020運動」(80歳までに20本の歯を保とう!)という運動をしています。
運動を始めてから数字的には上向いているようですが、果たしてこの運動に適したことが本当に行われているのでしょうか? 

以前から疑問を感じていましたが、来院患者さんとお話しして最近改めて思うことは、歯を残す努力があまりに蔑ろにされていることです。


われわれ歯科医療者は、患者さんが希望されるならできるだけ歯を残す努力をし、インプラント治療をするのは、それでもどうしても歯が残せない場合に提案すべきだと思います。

治療でしっかり治せばまだまだ保存できる歯でも、簡単にインプラントを勧めるようでは、日本の歯科界の未来は明るくならないでしょう。


患者さん自身も軽率に考えないで頂きたいことがあります。
それはインプラントの安売り治療に飛びつかないことです。

考えられない低価格でインプラント治療を行っている医院もありますが、低価格の裏にはそれなりの理由があると思いませんか?

歯科医院はインプラントを販売しているのではなく、治療が目的で使います。
安売りをすれば患者さんの負担が減るためうれしいことですが、その反面きちんとした素材・材料で治療されているかどうか吟味する必要があります。

歯の保存治療には時間が掛かり大変だから、お手軽価格のインプラントにしよう!と思われる方もいらっしゃいますが、価格に見合う治療がなされるかどうかの判断は慎重に検討して下さい。


歯は無駄に生えてきたわけではありません。

必要だから生えてきたのです。