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噛める 快適な 入れ歯(義歯)

入れ歯について

入れ歯(義歯)の悩み

入れ歯になったこと自体お悩みでしょうが、「痛い」「噛めない」「合わない」「「落ちてくる」「浮いてくる」「はずれる」「うまく話せない」「カタカタ動く」「笑えない」など多くの悩みを抱えている患者さんが多い反面、多くの医療者(歯科医師・歯科技工士)が入れ歯の対策に頭を悩めているのも事実です。

同じように作ったにも関わらず噛めたり・噛めなかったり、痛かったり・痛くなかったりと出来栄えの善し悪しがもっとも顕著にあらわれるのが入れ歯です。そのため入れ歯は歯科医師・歯科技工士の考え・発想・テクニックにもっとも左右されるため、出来栄えにも差がでるのです。よって入れ歯製作ほど技術に差がでるものはありません。

入れ歯の性能にも個性が必要

ひとりひとり顎関節・顎の大きさや形・筋肉・粘膜・歯肉などの口腔内環境が違った条件をもっているのにも関わらず、咬合採得(上下の歯の位置関係を記録)・排列(歯の並べ方)に一定基準の法則や理論に当てはめようとし、口腔内条件に合わせる工夫がなされていないため不具合な入れ歯が溢れているのではないでしょうか。条件が皆違うため個々に合わせた対応が快適な入れ歯製作の第一歩になります。

最終的に患者さんひとりひとりの口腔内環境に合わせて製作しますから同じものはひとつとしてありません。顎の大きさ・形が異なるのは当たり前ですが、噛み方・食べかたの癖・好みの食品・話し方など多種多様ですから、それらも考慮して噛み合わせ・形態を模索します。

入れ歯は「身体の一部」ですから、いかに快適に使っていただけるようにするには、口腔内環境の個性に合わせるとともに治療法・材料にもこだわる必要があります。

適正な義歯の大きさ・高さ

入れ歯の安定を求めたり、吸い付き(吸着)を増す目的で入れ歯の床を必要以上に大きく伸ばした入れ歯を目にすることが多いです。これでは口の大きさに対し入れ歯が大きすぎるため、思うように口や舌が動かしにくく食事もお話もしづらく、必要以上の窮屈さから歯肉・粘膜に痛みがでたりします。もちろん小さすぎれば安定が悪くなり、ゆるい状態になりやすいため口の中でうまく落ち着かない入れ歯になり、歯肉に負担が大きく掛かるため痛みが発症しやすくなります。

噛み合わせる高さも重要な要素です。高さが低かったり、高かったりでは噛めない、話しづらい、そして口元が不自然にみえます。

「大きすぎず、小さすぎず」「きつすぎず、ゆるすぎず」「高すぎず、低すぎず」と適正な入れ歯は使い心地はもちろん装着感も快適です。快適な入れ歯が快適生活を支え、そして若返りにつながります。

入れ歯の「あそび」

入れ歯を精巧に仕上げることはとても大切な要素ですが、入れ歯ならではの「あそび」も必要になります。硬い入れ歯と軟らかい組織、硬さの異なる両者がちょうど良い加減でバランスよく安定するには、微妙な「あそび」が快適に使える入れ歯の大きな役割をします。

入れ歯は歯を削った部位にかぶせ物をするのとは違い、歯肉・粘膜の上に乗った状態で安定し使えるものでなければなりません。そのため歯肉・粘膜とピッタリ合わせることも重要ですが、合いが良すぎるとかえって窮屈で痛みが出たりします。歯肉・粘膜の状態にあった「あそび」があることでより使い心地の良い入れ歯になります。この「あそび」加減が入れ歯の快適さに左右します。

入れ歯安定剤

入れ歯安定剤の売れ行きは驚くほど多いそうです。安定剤が爆発的に売れている裏にはそれだけ具合の悪い入れ歯が存在しているということではないでしょうか。
本来は入れ歯に安定剤は必要ありませんから、安定剤の使用は根本的な解決にはなりません。

具合の悪い入れ歯を使い続けていればもちろんですが、安定剤を長期に使用している場合も賛成できません。あくまで一時の対処法としたその場しのぎという目的で使用するのであればそれほど弊害は起こりませんが、長期となれば話は別です。

自分自身で入れ歯安定剤を使って入れ歯の調整を行なっているといろいろな問題を引き起こします。もっとも多いのが噛み合わせが安定せず、顎の骨の吸収を促進させてしまいます。その場しのぎの調整は、かえって症状を悪化させてしまう場合が少なくありませんので使用にあたっては注意が必要です。

「入れ歯」「インプラント」どちらを選択?

歯を失えば従来の治療法は入れ歯が主流でしたが、近年インプラント治療の発展が目覚しく、あたかもほんとうの噛み心地はインプラントでしか味わえないという謳い文句で積極的にインプラントを勧める歯科医院が増えています。
痛くなくはずれないで快適に使える入れ歯ができるのであれば、骨に穴を開けインプラントを埋め込む治療は減ってもよさそうですが、実際には増える一方ではないでしょうか。

医療者の立場から「入れ歯」「インプラント」のどちらが最適なのかは一概には言えません。それぞれ利点・欠点があり最終的に選択されるのは患者さん自身になりますが、それぞれの情報をしっかり把握した上で選択されるとよいでしょう。

入れ歯製作の手順

お話を聞きます

現在使用中の入れ歯の悩みや不満、入れ歯になった経緯、どのような入れ歯を希望されているかなどのお話をお伺いします。

入れ歯と口の診察

まず入れ歯を入れた状態で口の中を拝見します。
どのような状態で口の中におさまっているのか?噛み合わせはどのようになっているのか?見た目はどうか?顎の動きはどうか?などさまざまな視点から観察します。
そして入れ歯をはずしていただき、口の中・入れ歯をそれぞれ診察します。
残っている歯があれば歯の診査及びレントゲン診査、軟らかい組織の歯肉・粘膜・筋肉などは直接触って診査します。

入れ歯は大きさ・形・厚み・設計・材質などいろいろな情報を読み取ります。
口の中の状態はひとりとして同じ人はいません。もちろん入れ歯も同じものはありません。そのためじっくり時間を掛けて診させていただきます。

治療計画案

ここまで見させていただくと、入れ歯の悩みと不満の原因におおよそ見当がつき、どのような手順で対応していくかイメージができます。
診査を参考に入れ歯製作の方法・手順・期間・材質・予算等を計画します。
お互いに合意が得られれば治療がスタートします。

治療方法

入れ歯製作は個々に治療法が異なります。
製作法はあれこれありますが誰にでもあてはまるような方法はなく、患者さんから得られた情報からいろいろな策で、微妙な匙加減で仕上げていきます。このような話だと曖昧で何を言わんとしているのか分からず困る方もいるでしょうが、入れ歯製作には最初から「これだ!」という決め手はありません。

当然口の中の条件がみんな違うため、あの手この手と引き出しの中から決め手を探し、患者さんの条件に合わせた手法・材質で心地良い快適な入れ歯に仕上げていきます。

調整をしっかり行なう

調整なしですむ患者さんも稀にいらっしゃいますが、ほとんどの方は微調整が必要です。
入れた直後の調整はもちろんですが、使い始めてからより快適にお使いいただくための微調整は、具合が悪いから調整するのではなく、よい状態を更によくするための調整と理解していただければと思います。
よく噛めるようになると、次第に力を入れて活発に使うようになります。すると筋肉も今までよりも活発に動くために、入れ歯にも粘膜の当たりとして現れることがあります。
噛み合わせも噛める入れ歯を使うと、顎の動きに変化が起きます。その顎の動きに合わせて噛み合わせの微調整を行ないます。

入れ歯が使えることにより生体にも変化が起きますから、その変化に対応した微調整を行なうことでより快適な状態でお使いいただけます。

入れ歯製作は連携が鍵

入れ歯製作は歯科医療の中でももっとも難しい分野と言ってもよいでしょう。残っている歯にセメントを使って固定したりするクラウンやブリッジ、インプラントのように骨に維持を求めず、動く歯肉(歯ぐき)の上に安定を求めなければなりません。
快適で噛み心地がよく、そして見た目の良い入れ歯は歯科医師・歯科技工士の連携が鍵を握ります。
歯型から得られた模型だけでは口腔内環境を把握するには限界があるため、患者さんの実際の顎の動き・歯肉の状態・粘膜の可動域・噛み合わせ・顔と全身とのバランスをみて判断し、その場で確実な工程を踏むことで機能性にも見た目にも満足していただける入れ歯が提供できると考えているため、各工程で歯科技工士立会いのもと製作にあたっています。

歯科医師が歯科技工士に口で伝えれる情報量よりも実際に立会いをした情報量ははるかに勝ります。よってより満足していただける入れ歯が作れるのです。

治療用の入れ歯(治療用義歯)の製作

入れ歯を作りかえる場合、多くは調子が悪いために作りかえるのではないでしょうか。

そんなときいきなり最終的な入れ歯を作ろうとしても、快適で満足のいく入れ歯に仕上げることはとても困難です。

調子の悪い入れ歯のほとんどは生体に合っていない入れ歯です。合っていない入れ歯を使い続けていると一番支障をきたすのが噛み方です。本来の噛み方でなく、合っていない入れ歯の噛み方に慣れてしまい、噛み方に悪い癖がつき習慣化していることがほとんどです。それに伴い顎関節・筋肉・唇・舌・歯肉・粘膜などにも悪影響を及ぼしているため、それらの環境を整えないで最終的な入れ歯を作っても満足して噛むことは難しいでしょう。

快適で満足した入れ歯を作るには、悪い習慣と原因を取り除き、口腔内と周囲の環境を整え、まず「しっかり噛む」ための準備をすることから始めます。その役割を果たすのが治療用の入れ歯(治療用義歯)です。

例えば、調子の悪い入れ歯が最初から噛み合わせの低い状態で作られていたり、噛み合わせる面の材質が減り噛み合わせが崩れた場合など、適切な高さではない状態が多くあります。そのような状態のときはいきなり理想的な高さに調整できる方は少なく、ほとんどの人は徐々に高さを調整していく必要があります。治療用の入れ歯を使用して材料を状況に合わせて継ぎ足しをし、適切な高さに調整していきます。そして少しずつ噛む環境を整えるために微妙な調整を繰り返しながら、刻々と変化する状況に対応し、生体と調和した状態に仕上げていきます。

治療用の入れ歯を作る工程は、最終的な入れ歯を作るよりも時間と労力が掛かりますが、問題点を極力改善し最終的に快適で満足した入れ歯に仕上げるにはメリットが多く、重要な役割を担います。

もちろんすべての方に必ず治療用の入れ歯が必要というわけではありません。

それほど問題点のない場合は治療用の入れ歯の工程を踏まず最終的な入れ歯を作る方もいらっしゃいます。また現在使用中の入れ歯を改良して治療用の入れ歯として利用する場合もあります。それぞれ状況が異なるため治療用の入れ歯の必要性は診査してから判断することになります。

また、治療用の入れ歯の装着期間は患者さんの状態により異なりますので、期間を決めることはできませんが、少なくとも3ヶ月以上の使用は必要かと思います。口腔環境が整い、問題点が改善され、治療用の入れ歯で満足されれば最終的な入れ歯製作に取り掛かれます。

最終的な入れ歯は、治療用の入れ歯で整えてあるためスムーズに行なえます。

書籍

「落ちない 浮かない 総義歯の臨床」丸森 賢二 著

落ちない 浮かない 総義歯の臨床/丸森 賢二 著

私の師である故 丸森 賢二先生教えのもと、
丸森 英史先生・生田 龍平技工士そして微力ながら自分もお手伝いさせていただき、医歯薬出版株式会社さん協力のもと書籍化しました。
(2004年 出版)

この書籍には義歯製作の考え方・謎解きが詰まっています。
上記では紹介しきれない多くの情報が満載です。


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