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歯肉退縮について - vol.64 -

歯肉退縮とは、歯肉が下がり(痩せて)歯の根の部分の露出範囲が広くなることです。


歯肉退縮の主な原因は…

・歯周病により歯を支えている歯槽骨が溶けることによって起こる場合
・歯磨きの方法に問題があることによって起こる場合
・噛み合わせにより一部の歯に極端に力が掛かりすぎて歯槽骨が溶けてしまって起こる場合
・加齢による歯肉の老化によって起こる場合
・不適切な詰め物や補綴物による影響で起こる場合


歯肉退縮と歯磨き
歯の手入れをするために何気なくやっている歯磨きが思わぬ結果を招くことがあるため、ここでは歯磨きによる歯肉退縮についてお話ししたいと思います。


歯磨きで力が入りすぎている場合には、気がつかないうちに歯肉は退縮していきます。
強く磨かないと汚れが落ちた気がしないためゴシゴシ磨いたり、急いで磨くことで歯ブラシの動きが速くなりがちな場合は力任せに磨く習慣になっていることが多く、汚れを取る以前に歯肉にダメージを与えている場合があります。

また、極端に硬い歯ブラシを使用した歯ブラシもそうです。必要以上の硬さは歯肉をいじめるだけです。普通の硬さの歯ブラシでも十分な清掃能力はあります。

最近では歯周ポケット内を積極的に磨くようよく宣伝している毛先が尖った極細毛の歯ブラシも注意が必要です。毛先で歯周ポケットに突っ込み磨きを意識的に行なう場合も歯肉に必要以上の刺激が加わることで退縮する傾向があります。

歯磨き粉をたくさんつけて大きくストロークさせる横磨きも注意が必要です。この方法はきれいに磨けたような錯覚がおきますが、歯肉を削り取ってしまう動きが歯肉にダメージを与えます。


ただ力任せな磨き方・不適切な磨き方・歯磨き粉の使用で硬い歯でも削れてしまいます。それでは歯肉はどうでしょう? お分かりいただけると思いますが、歯と比較しても断然軟らかい組織です。そこに必要以上に刺激を与え続けたらどのような結果になるかおおよその予測がつくと思います。


毎日の歯磨き習慣で歯肉退縮を進行させてしまうのは、できるだけ避けたいものです。


歯肉退縮からくる合併症
歯肉が退縮し、歯根が露出している場合には冷たいものがしみる知覚過敏を合併している場合が多くあります。症状がでて始めて歯肉退縮が起こっていることを知る患者さんも多くいらっしゃいます。
歯根が露出した部分にできる根面カリエスがあります。
歯の根の露出した部分は、エナメル質ではなく、セメント質や象牙質であることが多く、硬い組織のエナメル質より、ずっとむし歯(根面カリエス)になりやすいのです。





 
過剰な歯磨きによって起こった臼歯部の歯肉退縮  歯根が露出しています。



適切な歯磨き方法であれば、人的な歯肉退縮は防げるはずです。