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「もう抜くしかない」と言われた方へ - vol.46 -

現在の歯科界の風潮は、しっかり治療すれば治せる歯も安易に抜歯宣告して、インプラントを勧める歯科医院が多くなったように思います。

「もうこの歯は治療してももたないので抜歯しましょう。そして早めにインプラントにしたほうがいいでしょう…」と言われたのですが、「抜かないとダメでしょうか? できるならインプラントにはしたくはないのですが…」と来院される方や電話での問い合わせが非常に多くなりました。


もちろん治療をしても保存できる可能性があまりにも低い場合は致し方ないとは思いますが、適切な治療を施せば保存可能な歯まであまりに簡単に「抜歯宣告」するのは如何なものだと思います。


私は他医院でインプラント治療を勧められ、抜歯宣告された歯を数多く残してきました。


治療法 としては、

 ・根管治療(根の中の治療) 
 ・歯周外科(歯の周りの歯肉を中心に外科的に処置する治療法) 
 ・歯根端切除(根の先端を外科的に治療する方法) 
 ・意図的再植法(一度歯を抜いて治療し、再び元に戻す治療法) 
 ・部分矯正(MTM)などを踏まえた治療法 
 ・再生治療     

    など様々です。


手間のかかる処置が多いのですが、患者さんが望み保存できそうな可能性があるなら、可能な限りの処置で最善を尽くして修復し、現役で活躍している歯が多くあります。そして結果的に多くの方に喜んで頂いています。


適切な処置で保存可能な歯でも、現実は歯の根の治療は複雑で手のかかる治療で、おまけに保険での採算を考えると割に合わない治療はやめて…との考えや、技術的に難易度が高く、予後に不安が残る処置はできるだけ避けて…との思いから、感染している根(怪しい歯)= 抜歯 そしてインプラントというマニュアルが出来上がってしまっているように思います。

もちろん中には一生懸命に時間を掛け、丁寧に根管治療をされる先生、さまざまな方法で保存を試みる先生も多くいらっしゃいますが、その反面まだまだ抜歯を先送りできそうな歯にも抜歯宣告をあまりに早く安易に勧める歯科医も多くいるのが悲しい現実です。


私は抜歯やインプラントを決して否定しているのではありません。安易な抜歯宣告を否定しているのです。もし歯科医自身や家族が同じような立場ならきっと安易な選択はしないと思います。ですから患者さんに対しても同じ目線で判断することを忘れてはならないと思います。


疑問に感じたり、どうも腑に落ちない、納得がいかない抜歯を勧められた場合は、抜く前にセカンドオピニオンを求め、他の専門家にいろいろと意見を求めた方がよいかもしれません。
もしかしたらきちんと治療すれば救える歯かもしれませんから…