トップページ > 私考 > vol.38 歯周病が薬で治る? …


歯周病が薬で治る? - vol.38 -

歯周病を薬(抗カビ剤・抗菌剤)で治すことができるのでしょうか?(歯周内科治療)

歯周病で悩んでいる・苦労されている患者さんにはとても魅力的な治療法と感じるでしょう。長期に渡って炎症を繰り返し、その結果歯周病に至った状態が果たして薬だけで治るのでしょうか?


もし薬だけで本当に治るのであればこんなに簡単な方法はないでしょう。


私が思うに…
歯周病治療において急性の腫れや痛みに対し、症状を和らげるために薬(抗生物質・鎮痛剤)を使用することはもちろんあります。しかし、慢性的な炎症がつのって歯肉や骨にダメージを受けた歯周病がどこまで薬で治るのか… 結論から言うと効果がないわけではありませんが、あくまで補助的な効果で「治る」と言い切ってしまうほどの効果は期待できないと思います。むしろ日々の手入れと機械的に汚れを除去するほうがよっぽど効率的で、尚且つ確実・安心です。



薬は病気や疾患を治す手助けをするもので、根本療法ではありません。薬 = 治る は急性的あるいは初期症状であれば間違った言い方ではないと思いますが、慢性的な疾患に属する歯周病に対しては不適切で誤解を招く言い方のように感じます。慢性的な歯周病に対しては「治ります」と断定的な言い方ではなく「進行を抑えられます」「軽減します」などが適切な言い方ではないでしょうか。

「歯周病は薬で治る」とは、なにをもってどんなレベルで「治りました」としているのか現時点では理解に苦しみます。



たとえ薬が効果的だったとしても、薬だけに頼ってしまうと後々が心配です。おそらく歯周病治療で薬を使い始めたならば、継続的に飲み続けたり、使い続けなければならないでしょう。そうなるといずれ薬の効果はうすれ、耐性菌も作られる環境になり兼ねません。そして更に薬の増量・強い薬が必要になるかもしれません。

薬で全てコントロールできる病原菌などいないと思っていいと思います。私達は生活する上で常に菌と共生しているわけですから、何かの菌が消滅すれば、何かが繁殖するように薬に頼った治療は悪玉菌だけを狙って攻撃はできず、善玉菌も少なからず犠牲になります。


薬で治るほど歯周病は単純な疾患ではないのです。



「治ります」と聞くと期待も大きくなりますが、あまり断定的な謳い文句は如何なものかと思います。よくよく考えてみて下さい。「ダイエット」「発毛」なども薬で治ると巷で良く話題に出ますが、効果はどうでしょう。ごく一部の方には、非常に効果がある場合もあるでしょうが、全体を見渡してみるとどれほど効果があるのか疑問です。一部の効果を宣伝文句に集客効果を狙っているとしか思えてなりません。


はっきり言えることは、おいしい話には安易に飛びつかないことでしょう。