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抜歯基準の違い - vol.80 -

「この歯は、ある歯科医院で抜歯と言われましたが、他の歯科医院では抜かなくても大丈夫と言われました。そして大学病院では抜歯と言われ、最終的にどうしたらいいのか診断してください。」などと歯を抜かないといけないのか?抜かなくて済むのか?の判断を求められる機会が多くなっています。


抜歯基準の違いは、厳密な基準はなく担当医の得意分野などにより抜歯基準や治療法も異なるため、上記のように意見が分かれることがあるのです。

近代歯科医療の中でもインプラント治療は素晴らしい成果を上げている一方、あまりに安易に行う場合も多く、その弊害として抜歯基準が甘くなってきていると感じます。


A先生が抜歯と言っても B先生は根管治療をしっかり行なえばまだまだ保存可能 C先生は外科的な処置を行なえば残せます。 D先生は矯正を踏まえた治療方針で保存します。など先生の技量と複数の総合的な判断で保存可能になることもあります。


総合的な判断として、患歯の状態・隣在歯の状態・歯肉やその周囲組織の状態・嚙み合わせの状態・歯並び・予防状態・習癖の有無・患者さんの歯に対する思い・経済的要素などなど多くの要素を医療者の得意分野と技量に加味して判断します。


最終的には抜歯した場合の利点欠点 抜歯しない場合の利点欠点も含め、今後の計画と予後を話し、患者さんと治療方針が共有できたら処置するスタイルが理想的です。



私の抜歯基準は、「機能している歯はできるだけ温存するようにしますが、存在することで周囲に悪影響を及ぼすようであれば抜歯を提案する」ようにしています。
しかし周囲に悪影響を及ぼしそうな状況でも、どうしても抜きたくない患者さんにはしっかり状況をお伝えした上で無理に抜歯は行ないません。
また機能する しないの判断がつきにくい場合は、患者さんと様々な角度から話し合い、時には口腔内環境の改善や仮歯でのテスト 経過観察した上で判断し、それから新たに計画を立案します。



いろいろ手を尽くし歯をできるだけ残そうと考えている先生と早めに抜いてブリッジ・インプラント・義歯にする先生とでは、正直抜歯の基準にかなりの差があると思います。


誰が診断しても保存することが厳しいとなれば、抜歯という選択が良いと思いますが…
納得いかなかったり、判断に迷われているようなら、抜歯をする前にいろいろな先生に意見を求めてもよいと思います。