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歯磨きをしっかりしているだけでは本当のむし歯予防にはならない - vol.104 -

むし歯になる原因はいろいろあり、予防においては歯磨き習慣と甘いもの摂取がとても大きな要因として関係しています。
その他の原因として、不適合な充填や補綴物、咬合によるマイクロクラックなどによるものもありますが、ここでは予防とむし歯の関係に関して記載しますので割愛します。
患者さんからよく甘いものを食べた後・飲んだ後すぐに歯を磨けば大丈夫ですか?と質問を受けます。なかには歯に触れないで飲み込めば大丈夫だと思っている方もいらっしゃいます。


歯をしっかり磨いていれば甘いものをたくさん食べても大丈夫だと思い込んでいる方
また、甘いものを食べた後・飲んだ後すぐに歯を磨けば大丈夫と思っている方
歯磨き等の外側からのケアは大丈夫でも、血糖コントロール等の内側からのケアが十分とは言えません。


これまで「むし歯は、歯磨き習慣と甘いもの摂取量・摂取頻度が原因で起こる」と考えられてきましたが、高血糖によって血液から唾液に漏れ出した糖(グルコースとフルクトース)が、口腔細菌バランスを変化させ、むし歯リスクを高める。つまり、「食べ物として口に入った糖」だけでなく、「血液から唾液へ移行した糖」も、むし歯に関わることが明らかになりました。
また、血液から唾液への糖の移行が大きいほど、むし歯菌が増加して酸を産生し、むし歯のリスクを上げることも最新の研究によって明らかになりました。


今回の研究では、唾液腺の出口から分泌直後の“腺唾液”を直接採取し、メタボロミクス解析を行うという新しい手法が用いられました。
その結果、以下のことが世界で初めて明らかになりました。

•血液から唾液へ糖が移行していること
•唾液中の糖が、歯垢中の細菌バランスを変化させること
•むし歯菌(ミュータンス菌など)が増え、酸を多く産生すること



唾液に糖が含まれると… 口の中では次のような変化が起こりむし歯リスクを高めます。

•むし歯菌が活発に増える
•歯を守る善玉菌が減る
•口腔内が酸性に傾き、歯が溶けやすくなる


つまり、高血糖だと「食べていないのに、唾液によって食べた時と同じような口の中が甘い状態」が続いてしまうのです。


食事をしていない時間帯でも、口の中に糖が供給され続けるため、糖の摂取量が多い方や摂取頻度の多い方は、歯磨きだけでは本当のむし歯予防にはならないのです.
 


しかし、「歯みがきをしても意味がない」ということではありません。
日々の歯みがきは、むし歯予防の基本としてとても大切です。
今回の研究が示しているのは、外側からのケア(歯磨き・清掃)と内側からのケア(血糖管理)の両方が揃って初めて本当の予防になるということです。
歯磨きだけ頑張っていても糖分摂取が多い方の歯肉は赤味が強く、唾液はネバネバ・ドロドロします。まさにこのようなことが内側の予防に問題があるということなのです。


果物や蜂蜜は大丈夫?
砂糖がダメなら果物や蜂蜜はどうですか? 甘いもの好きのほとんどの方がこの質問をしてきます。果物や蜂蜜は血糖値を上げにくい果糖が多く、その果糖はむし歯菌が作り出すバイオフィルムのベースとなる不溶性グルカンの材料にならないため、長年「果糖はむし歯の原因にならない」と言われてきましたが、近年の研究ではむし歯菌はさまざまな糖質から酸をつくり出し、むし歯のリスクとなることがわかっています。
また最近の果物は昔と違って非常に糖度が高く、生産者も甘さを競っている状況です。血液から唾液に溢れ出た果物の果糖(フルクトース)は、特に悪質なむし歯菌(ミュータンス菌)の大好物で、悪玉菌が爆発的に増え、逆に歯を守る善玉菌が減ってしまい、口腔内の細菌バランスをも崩してしまいます。



最新の研究で糖が血液から唾液を通して口腔内に与える影響がはっきり明確になったことで、血糖コントロールがむし歯予防にも直結し、良好な血糖管理は大切な歯を守ることにもつながることを知っていただき、より良い口腔内環境作りの参考になればと思います。