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レジン充填 - vol.85 -

レジン充填とは、歯科用レジン(樹脂・プラスチック)を直接歯に盛り足し、歯の形態や色調を整える治療法です。そして呼び名が違うだけでダイレクトボンディング・コンポジットレジン・ハイブリッドレジンなどと呼ばれる治療内容は全て同じです。
以前からある治療法なのですが、近年MI治療やメタルフリーの兆候から徐々に幅広く取り入れられている傾向が多いです。その中で万能材料と勘違いし、かなり不適切な治療も多く目にするため、利点欠点を知ったうえで治療を受けるとよいと思います。



利点
  ・歯を削る量が少なくて済むため、必要最小限の削合で治療が行える。(MI治療)
  ・被せ物をするより直接歯に詰めるため短時間で治療が済む。
  ・色調が自然。
  ・治療部位が欠けたりした場合、補修可能な場合がある。
  ・被せ物をする場合より価格がリーズナブル。  
 

欠点
  ・素材がプラスチック系のため時間と共に艶がなくなり、吸水性があるため時間とともに変色する。
   (嗜好している物・歯磨き習慣によってかなりの個人差はあります。)
  ・歯質が大きく欠損している部位や力が大きく掛かる部位には強度的に向かない。
  ・他の材質より劣化、減りやすい。



レジン治療は歯に優しいので患者さんにも受けやすい治療です。
利点欠点をしっかり踏まえれば何ら問題はありませんが、適応を間違った場合は噛み合わせに支障をきたすことがあります。


気を付ける点は、大臼歯咬合面に広範囲に充填を行う場合や土台・被せ物で対応した方が良い場合においてもすべてレジン充填で作りあげる場合です。
見た目は良いのですが、広範囲にしかも隣接に接するところまで充填するのは強度的に無理があります。
レジンは万能な素材と思っている方もいらっしゃいますが… レジン系は、他の材質(セラミック・メタルなど)と比較しても劣化しやすく、強度にも劣る点があるため、小さなむし歯や歯頚部などのあまり力が加わらないもしくは噛み合わせ(咬合)に影響しない部位への治療は適切な治療だと思いますが、噛み合わせや強度を重視すると適さないと思います。


また治療直後は良いのですが、劣化や摩耗の問題により長期で見た場合、充填したレジンが極端に咬耗し残存歯質と段差が生じることで歯質の破損や噛み合わせに支障をきたす場合があります。



最近 広範囲充填を行いその後の状態が芳しくないため相談に見える患者さんがかなり増えましたが、ほとんどの方は材質の咬耗や破損による咬合不良(ズレや不安定)で、次いで二次カリエス、顎関節症などです。このような状態を目にすると広範囲充填の限界を感じざるを得ません。



口腔内環境・噛み合わせ具合・習癖など そして歯科医師の技術によって仕上がりと経過に大きな差が出ますので、このような欠点が全てに当てはまるわけではありませんが、トラブルの多くは材質を扱いきれていない場合や不適切な使われ方によるものと思われます。



適切なレジン充填を希望される場合は、技術に優れた先生にお願いしなければ、ただ レジンで簡単に詰め物をしただけの治療で術後に様々な支障をきたす可能性が高いので、歯科医師選びは慎重になさるのが良いでしょう。